水稲育苗マット【エースマット】を完全解説!メリットから使い方までご紹介!ロックウール製の軽くて保水性の高いマットです
エースマットは育苗の時に培土の代わりに使用するマットです。肥料成分の入っているエースマットは培土よりも軽く、かん水を減らすことができるなど、さまざまなメリットを持っています。そんなエースマットについて詳しく見ていきましょう。
- 目次 -
エースマットとは?
エースマットとは、稲の育苗箱に土の代わりに敷くマットです。肥料成分を含み、吸水・保持性のあるエースマットに水をやり、種もみをまいて覆土すると、苗は水分や養分を吸収して生長します。日本ロックウール株式会社が製造・販売していて、エースマットはロックウールという素材でできており、このロックウールをシート状に裁断したものがエースマットです。
ロックウールとは?
ロックウールは、天然の石材を原料として作られた無機質の人造鉱物繊維です。高炉スラグや岩石を高温で溶かし、細い繊維状に加工して作られます。主成分は二酸化ケイ素と酸化カルシウムです。天然の石材を原料として作られているため、環境にやさしい素材です。
軽量なため、断熱材や吸音材、防音材、防火材、保温材、防振材として、住宅やビル、工場などの建築物、自動車や船舶などの輸送機器、工業などの様々な分野で使用されています。また、ロックウールには土壌改良性も持っており、農業分野でも使用されています。
エースマットのメリット
エースマットがどんなものか分かったところでメリットについて見ていきましょう。
苗の重量が軽くなる
エースマットの最大のメリットは、培土に比べて軽量であることです。エースマットは、軽量なロックウール素材で作られているため、重量が軽くなります。播種直後の重量を比較すると、一般的な培土は約6kgですが、エースマットだと約4kgとなり、およそ2kgも軽くなります。
育苗作業は農家にとってかなり重労働です。実際に作業をすると、この2kgの差が大きな違いだということが分かります。育苗箱を移動させたり並べたりする作業が楽になるため、体への負担を減らすことができます。
かん水の回数を減らすことができる
エースマットは、透水性と保水性に優れています。つまり、水を通しやすく、水分を保持しやすいため、かん水の回数を減らすことができます。作業が減ることは大きなメリットとなります。
品質が安定している
工業的に生産されているため品質が安定しています。マット表面には肥料成分が塗布されています。(肥料無しのタイプもあります。)
ケイ酸補給により健苗が育つ
エースマットは可溶性ケイ酸を40%以上含有している素材です。ケイ酸は健苗の育成に効果があります。ケイ酸は、植物の細胞壁の構成成分であり、根・茎・葉を丈夫にし、葉緑素の合成や病害虫の抵抗力向上に効果があります。
・葉緑素の合成が促進され、葉色が濃くなる。
・病害虫の抵抗力が向上する。
・根張りがよくなり、倒伏しにくくなる。
病気が発生しにくい
エースマットは原料の高炉スラグを1,500℃で溶融し、製造されています。そのため雑菌等を含みにくいので、病気が発生しにくいのが特徴です。
育苗箱の洗浄が楽になる
エースマットを使うと育苗箱に付着する土が少なく、育苗箱を洗う作業が簡単になります。作業効率が上がり育苗にかかる時間も短縮できます。
コストカットに繋がる
上記のメリットにより、育苗作業の大幅な効率化を図ることができます。また、エースマットを使うことで病気の発生が抑制されるので、農薬の使用量を減らすことになり、農薬にかかる経費を削減することができます。
タイプについて
マットにはK,N,D,無肥料タイプがあり、それぞれ肥料の配合量が異なります。栽培地域に合わせて使い合わせましょう。
・Kタイプ:寒地向け(窒素2.0g、リン酸1.5g、カリウム2.0g)
・Nタイプ:一般向け(窒素1.5g、リン酸1.0g、カリウム1.0g)
・Dタイプ:暖地向け(窒素0.8g、リン酸0.8g、カリウム0.8g)
・無肥料タイプ(チビッコマット):乳苗用(窒素0.0g、リン酸0.0g、カリウム0.0g)
使い方
①保管方法
マットはダンボール箱に入れて、直射日光の当たらない場所に保管しましょう。塗布している肥料には吸湿性があるため、湿度の高い場所は避けて保管してください。マットを全て使わない場合、余ったマットは梱包されていたフィルムに包み、ダンボール箱に入れて保管しましょう。
②準備
種もみの選種・消毒・浸種・催芽は慣行通り行います。マットは病原菌等を含みませんが、外からの菌が付着する可能性があるため、育苗箱などの資材は消毒するのがおすすめです。
③マットのセット
マットには表裏があるので、育苗箱に肥料を塗布してある面(白い面)を上にしてセットします。粉じんが飛散する恐れがあるため、マスクなどの保護具を使用しましょう。穴数の多い中苗用の育苗箱を使う場合は、根を通しにくい紙を敷きます。
④初期かん水・播種
ムラなくたっぷりとかん水します(2リットル以上)。スチーム発芽器、ダイヤカットの育苗箱、敷紙を使う場合は、やや少なめの1.8リットルを目安とします。水の量はかん水前後の育苗箱の重さを比べて確認します。病害虫の防除は慣行通りに行います。かん水後、慣行通りムラなく播種します。
⑤覆土
粒状培土を使用してください。粉状の培土はマットの中に入り込み、種もみが酸欠を起こす可能性があるため、使用しないでください。床土に培土を使用する場合よりも、やや多めが基本です。
すり切りより2〜3mm少なめの量、1.4kgを目安にしてください。すり切りにしても発芽や生育に問題ありませんが、出芽が半日から1日程度遅れる傾向にあります。覆土量が少ない場合やムラがある場合は、根上りの原因となるため注意しましょう。培土と異なり、種もみがマットに潜らないため、種もみの厚さ分、覆土を多くかけるイメージです。
⑥育苗中のかん水
緑化期は、最初にかん水した水が残っているので、乾燥しない程度にかん水しましょう。ここで多量のかん水をすると、根張り不良を招きます。硬化初期までは、かん水量を控えめとし、生育・天候に合わせて徐々にかん水量を増やしていきます。
かん水は気温の上昇中である午前中に行いましょう。午後にかん水すると、日中温められたマット内の水分が冷えてしまい、根の伸長が抑制されます。
⑦本田移植(田植え)
マット苗は軽いため田植機の苗のせ台の滑りが悪い場合があるので、移植時には苗のすべりを良くするためにかん水しましょう。浮苗が発生する場合は、根付深さを調整してください。苗の継ぎ足しは早めに行います。
ポイントまとめ(培土での育苗との違い)
・播種時のかん水量は「2リットル」
・覆土はやや多め(4kgが目安)
・出芽〜緑化期はマット内の水が冷えないようにしっかり保温する
・緑化〜硬化初期は播種時にかけた水が残っているのでかん水は控えめにする
・硬化期以降も根を冷やさないように午前中にかん水を行う
最も大事なのはなんといっても「かん水量」です。かん水量が不足すると出芽ムラ、生育ムラの原因となるので、注意してください。マットを使用して失敗する理由の多くは、は種時のかん水量不足が原因です。逆に、過剰なかん水やマットの長時間のドブ浸けは、肥料成分が流出する恐れがあります。
まとめ
商品 | タイプ | 特徴 |
---|---|---|
エースマット | 寒地向け (窒素2.0g、リン酸1.5g、カリウム2.0g) |
|
Nタイプ |
一般向け (窒素1.5g、リン酸1.0g、カリウム1.0g) |
|
Dタイプ |
暖地向け (窒素0.8g、リン酸0.8g、カリウム0.8g) |
|
無肥料タイプ(チビッコマット) |
乳苗用 (窒素0.0g、リン酸0.0g、カリウム0.0g) |
エースマットは、水稲の育苗に大きなメリットをもたらす画期的な資材です。すでに多くの農家で導入されており、その効果が実証されています。皆さんもエースマットをぜひ使ってみてはいかがでしょうか。
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