稲作栽培において比較的新しい育苗技術である「密苗(みつなえ)栽培」。重労働である育苗箱の運搬作業などを省力化できると注目されている密苗栽培ですが、実際のところどのようなメリットがあるのでしょうか。そこで今回は、密苗栽培の栽培方法や注意点を解説しつつ、しっかりとした苗を作るうえで欠かせない苗踏みローラーを3つご紹介します。
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密苗栽培とは?
密苗栽培とは、農業機械の製造・販売を手がけるヤンマーホールディングス株式会社が生産者や研究者と共同で研究を行うことで実用化された栽培技術です。従来の慣行農法であれば100~150gの乾籾を播種するところ、250~300g播くことで高密度な状態で育苗を行う栽培技術で、収益性の向上や省力化が見込めるとのことから現在では全国各地で取り組む生産者が増えてきています。
密苗栽培が話題となっている背景として、上記で挙げた理由の他に慣行農法とほぼ同様の管理方法で育てることが可能であること、どんな品種や地域にも対応できることから導入するにあたってのハードルが低いというのもポイントとなっています。また、収量や品質も従来の栽培方法と同等であるという点も注目を集めている理由のひとつです。
密苗栽培のメリット
低コスト
水稲を30ヘクタールの面積で栽培する場合、育苗にかかるコスト(育苗箱・培土・種子籾など)は通常で145万円ほどかかるとも言われています。一方で密苗栽培を採用した場合、育苗に必要な資材のコストを1/2に抑えることが可能です。また、播種作業の時間や苗の運搬時間も省力化できるので結果的に人件費も削減することができます。
省力化
密苗栽培では、1枚の育苗箱に通常の2~3倍の種子を播きます。そのため、育苗箱の枚数が大幅に減るので播種にかかる時間はもちろんのこと、最も重労働とも言われている苗の運搬作業の時間を大幅に削減することが可能になります。
省スペース化
慣行農法と比べて育苗箱の枚数が大幅に削減できるので、育苗に必要なビニールハウスも従来の1/3程度と省スペースにもつながります。
密苗栽培のポイントと注意点
慣行農法とほぼ同じ管理方法で行う密苗栽培ですが、高密度であるがゆえに気を付けなくてはならないポイントがいくつかあります。ここでは、密苗栽培を行う上で気を付けるべきポイントをご紹介します。
慣行栽培(かんこうさいばい)とは普通一般に行われている栽培方法で、通常生産過程において農薬や化学肥料を使用する従来型の栽培のことを言います。
育苗は短期間で行う
慣行農法では一般的に20~25日程の育苗期間を要します。一方密苗栽培では、14~21日が目安と育苗期間が短めに設定されています。苗の生育は気温で左右されるので、温暖な地域では生育日数が短く寒冷地などでは移植適期になるまで日数が必要となります。品種や移植時期によって育苗スケジュールを計画しましょう。
種子消毒を必ず行う
密苗栽培では、一枚の苗で広い面積に移植するため育苗期に起こる病害発生が後々甚大な被害になることにもなり得ます。主な病害である「いもち病」や「ばか苗病」などを防ぐためにも必ず種子消毒を行いましょう。消毒方法は、薬剤消毒、温湯消毒どちらでも大丈夫です。
いもち病とは稲の病気の中で最も被害が大きく怖い病気です。 いもち病菌という糸状菌の寄生によって発病します。
ばか苗病とは菌に感染した苗は著しく徒長し、正常な個体のほぼ2倍に達し、葉色は薄く節間は長く倒れやすい個体になります。また分蘖(ぶんけつ)も僅かとなり、収穫に悪影響を及します。主にイネに見られるが、まれにトウモロコシに感染し発症することもあります。
床土を調整
密苗栽培では種籾の層が厚くなるので覆土があふれてしまうことがあります。そういった場合には床土を少なくするなどして調整してください。
催芽は特に重要
発芽を揃えるために慣行と同様催芽を行います。品種によっても多少の違いはありますが、積算温度が100度になるように調整して下さい。芽が伸びすぎてしまうと播種の際に折れてしまったり絡まって播きづらいということになるので芽の長さが1mm弱で揃っているハトムネ催芽になるようにしましょう。
徒長に注意
密苗栽培は種籾を厚く播くので茎が太くなりにくく、慣行と比べて徒長しやすいという特徴もあります。徒長してしまうと根の張りが悪くなり田植え後の生育に影響してしまいます。芽出し後はハウスの換気を行うなどして芽を伸ばし過ぎないようにしてください。
徒長とは植物の茎や枝が必要以上に間延びしてしまうことをいいます。 正常に育った植物と比べて病弱・虚弱で、害虫に対する抵抗性も弱く、暑さ寒さなど、環境の変化も受けやすくなります。 花も咲かず、野菜や果物の実もならず、作物の収穫量にも大きな影響を及ぼします。
徒長を防いで強い苗を作る「苗踏み」
水稲栽培などでは「苗踏み」といって、育苗中に苗を踏むという作業を行います。苗踏みは慣行栽培をはじめ密苗栽培やプール育苗でも行うことが推奨されています。
苗踏みを行う理由
・根の張りがよくなる
・茎が太くなる
・徒長を抑える
・苗の生育が揃う
・倒伏防止にもつながる
足や板で苗を踏むといった昔ながらの方法もありますが、均一に苗を踏むことができる苗踏みローラーを使うのがおすすめです。小さい苗に重いローラーを乗せるのは傷つきそうで不安という方もいるかもしれませんが、一般的に苗踏みローラーはどの方向にかけても箱の淵の上をころがるように作られているので、芽が傷つけられてしまうということはありません。苗踏み作業を効率よく行いたいという方は、是非苗踏みローラーを使用してみて下さい。
丈夫な苗作りに!おすすめの苗踏みローラー3選
密苗栽培はもちろん、慣行やプール育苗などさまざまな栽培方法で使用することができる苗踏みローラーを3つご紹介します。
「育苗ローラー IR-W1250」 は、育苗箱縦4枚、横2枚に対応可能な育苗ローラーです。柄は左右に5段階の角度調整が行えるため、お好みの角度で使えてさまざまな用途に便利な商品となっています。また、生育に応じて重量の調整も行えます。
「健苗ローラー KBR-15W 」は、ハンドル根元に持ち手を付けることで取り回しや持ち運びがしやすい育苗ローラーです。ローラーの両端は丁寧な面取り加工を施すことで苗を傷つけないよう配慮された設計になっています。また、ウェイト台は着脱式になっているので不要な場合は外して使用することもできます。
「育苗転圧ローラー TR-1000 」は、柄がスライド式になっているので長さを2000~2800mmに変えることができます。もちろん左右の角度調整も可能です。2Lのぺットボトル3本分のウエイト代が付いているので重さも自由に調整することができます。
苗踏みローラーの使用時期と使い方
育苗ローラーはかけるタイミングも重要で適切な時期に行うことで強く丈夫な苗を作ることができます。ここでは、苗の成長に合わせた育苗ローラーの使用時期と方法を説明します。
苗踏みローラーは、葉齢1.2葉、草丈4cmの頃を目安に行います。苗踏みローラーのかけ方は、葉鞘が折れ曲がるくらいが最も効果的です。これを行うことで発根数が多くなり根張りがよくなります。
葉齢1.4~1.5葉、草丈6~7cmの頃を目安に行います。薬剤散布や追肥の予定がある場合には、苗踏みローラーをかける前日までに行っておくことを忘れないようにしましょう。ローラーのかけ方は、1回目と逆の方向に苗が曲がるように苗踏みローラーを動かします。これにより、直立に戻ろうとする方の根が伸びるとともに抵抗力が働き、葉や茎が固くなります。
葉齢1.8~2.0葉の頃に行います。2回目と逆の方向に育苗ローラーをかけて行きます。この頃になるとハンドルにある程度の重さをかけないと曲がらないほど苗が強くなっていることがわかると思います。苗踏みローラーのウエイト台に重みのあるものを乗せて行いましょう。
土落としに使う場合
発芽で持ち上がった土を落とすときは、土が乾いていることを確認してから行うようにしてください。土が湿ったまま育苗ローラーをかけてしまうとローラーの表面に土が付いてしまい芽を潰してしまうことがあります。そのため、苗踏みローラーを使用する際は灌水などは行わずに午後からローラーをかけることで土が付着して塊りになってしまうのを防ぐことができます。
プール育苗で使用する場合
プール育苗で使用する場合、1回目だけは水を抜いてから苗踏みローラーをかけるようにして下さい。これは、発芽後1週間は根の張りが弱いのでローラーをかけてしまうと苗が抜けてしまう恐れがあるためです。2回目以降は通常通り水を張ったままローラーをかけても問題ありません。
まとめ
商品 | 特長 | サイズ |
左右に5段階調整可能です。 |
ローラー幅:1250mm |
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苗の茎曲げに最適です。 健康な苗作り、“苗八分作”に役立ちます。 |
ローラー幅:1000mm |
|
スライド式で長さ調整。 左右角度調整可能。 ペットボトルで重量調整。 |
ローラー幅:1000mm |
密苗栽培では、高密度な状態で育苗を行うので徒長しやすいといった特徴もあります。徒長を防ぐには湿度や温度に注意するなど毎日の管理も必須ですが、苗踏みを適期に行うことも重要です。苗踏みを効率的で均一に行いたいという方は是非、苗踏みローラーを活用してみてください。
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