育苗作業を省力化できると話題の「プール育苗」。育苗のさまざまな作業を簡略化できるだけでなく、均一な苗を育てられることからプール育苗を取り入れたいと考える生産者さんが増えてきています。
そこで今回は、プール育苗を始める際の手順を説明すると共におすすめの資材を紹介していきます。
極めれば育ちの揃った苗を簡単に作ることができます。
- 目次 -
プール育苗とは
プール育苗とは、水を張ったプールに育苗箱を並べて底面給水で苗を育てる育苗方法です。灌水作業の省力化をはじめさまざまなメリットがあり、日中の管理作業が難しい方などにとくにおすすめの方法となっています。
プール育苗を行うメリット
省力化できると話題のプール育苗ですが、それ以外にもたくさんのメリットがあるのを知っていますか?プール育苗を採用することで得られるメリットを紹介します。
灌水作業の省力化
換気作業を軽減
病害発生が少ない
苗が均一に育つ
床土の量を節約できる
追肥作業が簡単に
プール育苗の設置方法
プール育苗は、水平な置き床にビニールシートを敷いて水を貯められるプールを作り、播種後または出芽した育苗箱を並べて管理する育苗方法です。ここでは、プール育苗を始めるために必要な置き床の作り方やプール枠の設置方法について説明していきます。
① 置き床を水平にする
プール育苗では、まず最初に石や土の塊などを除去して置き床を水平に均す作業を行いましょう。凹んでいる部分には、土を足すかもみ殻などで高さを調節することも可能です。プール育苗の地面は、苗箱以上の高低差があると乾燥しすぎたり水没したりと苗の生育が変わってしまうので、水深差が3cm以内となるようにレーキなどを使ってできるだけ均一にしてください。
どうしても水平に均すことが難しい場所がある場合は、仕切り板を入れて小さなプールをいくつか作るといった方法もあります。
置き床の水平作業に必要な資材

「電子水もり管」は、水平を音で確認できる水もり管です。ホースが15mと長いので一人でも遠距離の水平確認が行えます。コンパクトサイズで狭い場所でも使いやすく、それほど大きくないプールの水平確認であれば大活躍間違いなしの商品です。

「スピニングレーザー」は、半径200mまで測定可能のレーザー水平器で大きいプールの水平出しにおすすめです。本体と受光器は防塵・防水IP66と悪天候などのさまざまな環境で使用できるスペックになっています。受光器を標準搭載しているので屋外などの光が見えにくい場所でも使用可能です。

「アスファルトタンパー 6kg」は、土を盛った箇所などを固める際に上から叩くような形で使用します。プール育苗はビニールハウスで行うため、狭い場所でも使用可能なタンパーを用いて土を平らにならしましょう。
② プール枠を作る
5~7cmの水深になるよう高さ10cm程度のプール枠を設置します。材料は、木の板や軽量鉄骨などで作ることができますが、水圧がかかるので動いたり曲がったりしないようしっかりと固定するのがポイントです。
また、苗箱を並べた時に5cmほどの隙間ができるように広めに枠を作るようにしましょう。そうすることで水の回りがよくなります。
プール枠作りに必要資材

「プール育苗用枠板 楽育」は、枠を立てて杭を刺すだけで簡単にプール枠を作ることができる商品です。板の寸法は長さ1m×高さ9cm×厚さ1.6cmで、お好みの大きさのプール枠を作ることができます。プラスチック製なのでとても頑丈で変形する心配もありません。使用時以外は重ねてコンパクトに収納可能です。

「 プール育苗杭 」は、上記で紹介したプール育苗用枠板で使用できます。しっかりと留まってくれるのが特徴で、打ち付けても曲がりません。
③ シートを敷く
プール枠の設置が完了したら、ビニール製のシートを敷きます。雑草などに穴を開けられないよう黒マルチなどの遮光性のあるシートを使用するのもおすすめです。シートの大きさは並べた苗箱の大きさよりも50cm以上余分に用意しておきましょう。
プールシートには主に2種類あり、ブルーシート系と農PO系です。(普通の農ビは縮んだり、裂けるのでおすすめできません。)どちらも強いですが、釘などの鋭く尖ったものでは穴が空きます。ブルーシート系は、厚手で伸びません、保温性に優れます。農PO系は、薄手で軽く伸びます。お好みでお選びください。
農PO系遮水プールシート
農PO系プールシートは、薄くて軽くさらに丈夫なので釘など刺さらない限り数年使えます。表面がつるつるしているので、突起物が刺さりにくく、摩擦も少ないです。農ビ系ではなく、農PO系なので、亀裂から引き裂きが大きくなることはありません。やや硬めで、プールの土手にフィットしにくいですがプール専用は、ハウス用農POより変形しにくく取り扱いやすくなっています。

「TKプールシート」は、プール育苗専用の遮水シートです。多層構造製膜により優れた耐候性と強度が特徴となっています。また、黒色の遮光効果により雑草が生えるのを抑制してくれます。従来の塩化ビニールと比べて軽量の為、展張の作業負担も軽減されます。
ブルーシート系遮水プールシート
ブルーシート系は厚みがあるので削れてもすぐには穴が開きません。また保温性に優れていて、下からの冷えが気になる方にはこちらがおすすめです。農PO系より柔らかいので、プールの土手にフィットしやすい。※ブルーシート系のシートがあるからといって、ブルーシートを代わりに使ってはいけません。プール対応でないブルーシートですとじわじわと水漏れしてしまいます。

「プール育苗用シート」は、とても丈夫で保温効果も期待できます。1m単位で必要な分だけ注文可能です。
出芽期・緑化期の管理方法
プール育苗においても出芽・緑化までの管理は従来の育苗方法と同じです。無加温平置き出芽の場合には、播種した苗箱を湛水していないプールに並べて被覆資材などで保護します。被覆資材がプール枠にかかってしまうと乾燥や高温障害の原因になるので隙間ができないように苗箱の下に巻き込むなどしてください。
おすすめの被覆資材紹介
出芽するまでは、床土を乾燥させないように被覆資材で密閉することが重要です。
ここでは、おすすめの商品を5つ紹介します。
断熱性や防湿、防水に【農業用ミラスーパー】

「農業用ミラスーパー」は、高発泡ポリエチレンシートに縦横PE繊維を貼り合わせることにより丈夫で保温性に優れた被覆資材です。軽量のため展張しやすく育苗管理におすすめの商品です。
必要な熱を逃がさない【ピアレスフィルム】

「ピアレスフィルム」は、苗に最適な光線だけを通すことにより高温化を防いで発芽や育苗に適した温度を保つことができます。適度に光を透過させるので徒長のない健苗を育てることが可能です。
高温障害、苗焼けリスク軽減【シルバーポリ】

「シルバーポリ」は、苗の出芽期や緑化期の高温障害などのリスクを軽減することができる被覆資材で、適温を確保することで健苗化を促します。また、適度な光(20%)を通すので苗白化症が起こりにくいのも特徴のひとつです。
保温、保冷効果に【アイホッカ】

「アイホッカ」は、水稲以外にもさまざまな育苗管理で使える不織布タイプの被覆資材です。厚手の不織布なので保温効果をはじめ、高い強度と耐候性で長期間使用可能となっています。
緑化期の生育促進に【端苗ホットネット】

「端苗ホットネット」は、出芽が完了して緑化期に使用することで端苗の生育を促進します。保温効果があるのでハウス中央部と端部の苗の入れ替え作業が不要に。
出芽後の管理方法
STEP ① : 湛水開始
出芽が揃ったら被覆資材を除去します。
【無加温平置き方法】この時には緑化も完了しているので、1葉が展開して2葉が出始めているのを確認したらプールに水を入れます。
【加温出芽方法】出芽が完了したらシートなどを被覆して緑化させる作業が必要です。出芽が遅れた苗を進水させてしまうと根張りが悪くなることがあるので、出芽揃いが悪いようなら入水は遅らせましょう。
STEP ② : 水管理
プールの推進は苗箱の上1~2cmをを基本に、水が少なくなったら足してください。水位が低すぎると水の保温効果が期待できないため、ハウスを開放していると温度が下がりすぎて生育が悪くなることがあるので注意しましょう。
STEP ③ : 換気
プールに湛水した後は、ビニールハウスを昼夜解放して十分な換気を行います。最低気温が4℃を下回りそうな場合はサイドのビニールを閉め、苗丈の半分くらいまで水を入れて保温してください。
気温が高くてサイドを開放しても30℃以上になりそうな場合には、プールの水を交換するなどの作業が必要になります。
STEP ④ : 落水
水を吸った苗箱はかなりの重量があるので、田植えの3日前くらいには落水を行います。プール育苗の苗は、慣行のものと比べて乾燥に弱いので萎れないよう注意が必要です。長時間放置する場合は、時々給水するようにしましょう。
デメリットについて
省力的でありながら苗が均一に育つなどメリットの多いプール育苗ですが、デメリットもあります。その点も踏まえて導入を検討しましょう。プール育苗を行う上で考えられるデメリットは以下の通りです。
ビニールハウス内ということもあり、機械が入りづらいので基本的には人が行う作業となります。労力が必要な作業なので負担となる生産者さんも多いようです。
気温に応じて育苗日数が変わるので、慣行よりも日数が必要になる場合があります。
プール育苗では早期の播種を避けるなどすれば無加温でも可能ですが、失敗リスクを減らすためには育苗器などで加温して出芽させる必要があります。
まとめ
商品 |
特長 |
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コンパクトサイズで一人での |
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半径200mまで測定可能な |
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水平にするために |
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枠を立てて杭を刺すだけで簡単に |
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プール育苗用の枠板で使用可能な杭 打ち付けても曲がりにくい |
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多層構造製膜による |
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とても丈夫で保温効果も期待 1m単位で必要な分だけ注文可能 |
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丈夫で保温性に優れた |
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適度に光を透過させ |
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苗の出芽期や緑化期の |
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厚手の不織布 保温効果・高い強度・耐候性 長期間使用可能 |
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出芽が完了して |
プール育苗を行うにあたって把握しておきたい枠の設置や、管理方法がおわかりいただけたと思います。これからプール育苗を始めようと考えている方の参考になれば幸いです。
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