農地の管理において、雑草対策は必要不可欠です。しかし、除草剤には農地で使用していいものと、使用してはいけないものがあることをご存知でしょうか。農地で使用できる除草剤は、安全性と効果の両方が考慮されています。
この記事では、農地における除草剤の選び方、効果を高める農薬の撒き方などついて詳しくご紹介します。安全性への配慮や効果的な除草のポイントを押さえながら、農地の雑草対策に取り組みましょう。
- 目次 -
農業での除草剤の使用について
農業において除草剤は、農作物の生育に悪影響を与える雑草を防除するために使用されます。雑草を防除することで、農作物の収穫量を増加させ、農作物の品質を向上させることができます。また、農作業の効率を向上させ、農作業者の労力を軽減することにも役立ちます。
しかし、誤った方法で除草剤を使用すると、人体への影響だけではなく、動物、環境にも悪影響を及ぼす可能性があるため、正しく使用することが重要です。除草剤を使用する際には、必ずラベルをよく読んで、正しく使用してください。
農薬の登録制度
農耕地で使用できる農薬は、農薬取締法に基づいた登録を受けています。この登録制度は、農林水産大臣が農薬を登録する制度です。農薬を製造・輸入するには、農薬取締法に基づいて、農林水産省に登録申請を行い、許可を受ける必要があります。農薬の登録は、安全性を確保し、適正な使用を促進するために行われています。
農薬の登録申請においては、効力、安全性、毒性、残留性などに関する審査が行われます。登録申請においては、農薬の残留性について、人や動物への影響が少ないことが確認する必要があります。
残留性とは、農薬が農作物や土壌に残留し、人や動物の健康に影響を与える可能性があること
登録を受けた農薬には登録番号が付与されています。登録番号は、安全性、有効性、使用方法などを示す重要な情報なので、農薬を使用する際には、必ず登録番号を確認してください。登録された農薬は、定められた用途にのみ使用することができ、用途以外に使用することは農薬取締法違反となります。
除草剤の種類
除草剤には、様々な種類があり、それぞれに特徴があります。それぞれを比較していきましょう。
①「農耕地用」と「非農耕地用」
農耕地用除草剤と非農耕地用除草剤の違いは、農薬取締法による農薬登録の有無です。
農耕地用
農耕地用除草剤は農作物や農地などの農作地に使用することができます。農耕地用除草剤は、農作物や動植物への薬効・薬害・安全性などを審査し、見極めた上で農薬登録されています。そのため、農耕地用除草剤は農作物や動植物に害を与える心配が少なく、安心して使用することができます。
非農耕地用
非農耕地用除草剤は農薬の登録を受けておらず、農作物等の栽培・管理以外の目的で用いられる場所(道路、駐車場、グランドなど)でのみ使用することができます。非農耕地用除草剤は、農作物や動植物への薬効・薬害・安全性などを審査していないため、農作物や動植物に害を与える可能性があります。
そのため、非農耕地用除草剤は農作物等の栽培・管理以外の目的で用いられる場所(道路、駐車場、グランドなど)でのみ使用してください。
②「土壌処理型(粒剤)」と「茎葉処理型(液剤)」
除草剤には、土壌処理型と茎葉処理型の2種類があります。土壌処理型除草剤と茎葉処理型除草剤のどちらを使用するかは、雑草の発生状況や、除草したい場所によって異なります。
例外もありますが、一般的は「粒剤=土壌処理型」「液剤=茎葉処理型」となっています。
土壌処理型(粒剤)
土壌処理型除草剤は、土壌に散布することで雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させたりします。雑草の種子の発芽を抑制するため、雑草の発生を未然に防ぐことができます。雑草の発生が少ない場合は、土壌処理型除草剤で十分な効果を得ることができます。
茎葉処理型(液剤)
茎葉処理型除草剤は、雑草の葉や茎に直接散布することで、雑草を枯死させます。雑草が既に発生している場合に効果を発揮します。雑草の発生が激しい場合は、茎葉処理型除草剤を使用すると効果的です。
項目 |
土壌処理型(粒剤) |
茎葉処理型(液剤) |
---|---|---|
メリット |
・根から枯らすことができる |
・散布したいところにピンポイントでまける |
デメリット |
・効果が出るまで時間がかかる |
・効果が切れるのが早い |
③「接触型」と「移行型」
除草剤には、接触型と移行型の2種類があります。
接触型
接触型除草剤は、雑草の葉や茎に直接散布することで効果を発揮します。除草剤が雑草の葉や茎に触れた部分が枯死します。そのため、雑草の根までは枯死しません。接触型除草剤は、移行型除草剤に比べて、効果が早く現れるのが特徴です。しかし、移行型除草剤に比べて、効果が持続しないのが特徴です。
移行型
移行型除草剤は、雑草の葉や茎に散布された除草剤が、根まで吸収されて効果を発揮します。そのため、雑草の根も枯死します。移行型除草剤は、接触型除草剤に比べて、効果が持続するのが特徴です。しかし、接触型除草剤に比べて、効果が現れるまでに時間がかかるのが特徴です。
④「選択性」と「非選択性」
除草剤には、選択性除草剤と非選択性除草剤の2種類があります。
選択性
選択性除草剤は、特定の雑草にのみ効果を発揮します。選択性除草剤は、非選択性除草剤に比べて、育てたい作物に害を与える心配が少ないのが特徴です。しかし、非選択性除草剤に比べて、効果が弱い場合があります。
非選択性
非選択性除草剤は、薬剤がかかった植物全てに効きます。そのため、雑草だけでなく、作物にも効果を発揮します。非選択性除草剤は、選択性除草剤に比べて、効果が強いのが特徴です。しかし、作物にも効果を発揮するため、使用には注意が必要です。
除草剤の使い方
除草剤の使い方は粒剤と液剤で異なります。
粒剤の場合
粒剤の場合、散布タイミングは次の通りです。粒剤除草剤(土壌処理型除草剤)は、手や散粒器で商品ラベルに書いてある散布量を守って使います。
● 雑草がまだほとんど生えていない
● 前日に雨が降るなど土壌が湿っている(除草剤が浸透し効果が出やすい上、風にも飛ばされにくい)
● 散布当日または翌日に雨が振らない(雨が降ると除草剤が流出してしまう)
● 風が強くない
液剤の場合
液剤の場合、散布タイミングは次の通りです。液剤除草剤(茎葉処理型除草剤)は、ジョウロや噴霧器を使って雑草の葉っぱや茎にしっかりとかけることがポイントです。商品ラベルに書いてある希釈量を守って使用しましょう。
● 雑草が大きくなりすぎていない
● 晴れが続く日(一般的に散布後6時間以上は日光に当てる必要がある)
服装
除草剤を散布する際は次の物を装着しましょう。
● 長袖・長ズボン
● 帽子
● 保護メガネ(ゴーグル)
● 農業用防塵マスク
● 手袋
● タオル(首にまく)
● 長袖
注意点
除草剤を使用する場合は隣地の方へ配慮が必要です。
他人の土地や農地の近くで散布する際は、隣に除草剤が飛んだり流出したりしないように、隣地との距離を取るようにしましょう。除草剤に対して否定的な考え方の人もいるので、後でトラブルにならないように、事前に散布することを伝えておくことも大切です。
農耕地で使用できるおすすめの除草剤
農薬登録のある安全性の高いおすすめの除草剤を紹介します。
ラウンドアップ マックスロード
特徴
ラウンドアップマックスロードは、非選択性の除草剤であり、広範囲の植物に対して効果を発揮します。除草の大変なスギナの根をより確実に枯らせることができます。雨に強く、散布後1時間後に雨が降っても大丈夫です。
その他、早春や晩秋のような低温、朝露がついた状態、乾燥が続く日、曇りが続く日など、日照時間が短い時、夕暮れ時など、除草に不向きな状況でも確かな効果を発揮します。
雑草の茎葉にかからずに土に落ちた成分は、微生物により自然物に分解されます。野生生物・鳥類・昆虫類にも安全性が高く、世界の環境保護区や、世界遺産の保全に、広く利用されています。
使い方
基本的には散布面積20㎡(6坪)で、水1Lに10mlを希釈します。しつこい多年生雑草には20ml、スギナには40mlを希釈します。ジョウロや通常ノズルの噴射機などで希釈します。
登録番号
第21766号
サンフーロン
特徴
サンフーロンは、アミノ酸系のグリホサートという成分が主成分の茎葉処理除草剤で、葉から吸収され、根まで枯らす除草剤です。土に落ちた成分はすぐに薬効を失い、微生物により自然物に分解されるので、種まきや植付けにも安心です。
野菜類、米、豆、小麦、果樹類など、多くの作物に農薬登録があります。一年生雑草から多年生雑草、ススキ・ササ類まで、根まで枯らすことができます。ジェネリック農薬なので、品質・効果は高いのに同レベルの除草剤よりも低価格なのも特長です。
使い方
基本的な雑草には散布面積100㎡(30坪)で、水5Lに50mlを希釈します。頑固な雑草には100ml、スギナには200mlを希釈します。※適用作物毎に希釈倍率は異なります。
登録番号
第18814号
バスタ液剤
特徴
バスタ液剤は「非選択性」の茎葉処理除草剤の中でも多くの作物に登録があり、適用範囲が広く、さまざまな場面で使うことができます。バスタ液剤の一番の特徴は、接触型除草剤の中でも特に処理後の効果の発現が早いこと。処理後も効果が長く持続します。
イネ科、広葉、一年生、多年生問わず、ほとんどの雑草に高い効果を示します。作物には直接薬液がかからなければ影響がありません。
使い方
ほとんどの雑草に対して100〜200倍の希釈液で効果を発揮します。多年生雑草には100〜150倍、一年生雑草には200倍に希釈します。100倍希釈の場合は水1Lにバスタ10ml、200倍希釈の場合は水1Lにバスタ5mlを薄めます。
登録番号
第20958号
ザクサ液剤
特徴
ザクサ液剤は、非選択性茎葉処理除草剤です。多様な草種に対する除草効果が高く、スギナ、ツユクサなど、ほとんどの雑草を枯らします。効果発現の早さ、効果の持続性に優れています。
また、有効成分のグルホシネートPは、自然界における物質循環の中で容易に分解されるため、土壌中で速やかに分解されます。作物、土壌、環境に対する影響が少ない剤であり、さまざまな場面で使うことができます。
使い方
多年生雑草には100~150倍、一年生雑草には200倍で希釈します。様々な種類の雑草が生えている場合は100~150倍で使用するのがおすすめです。100倍希釈の場合、水10Lに対して、ザクサ100mlです。作物ごとに使用量が決められていますので、ラベルをよく読んで使いましょう。
登録番号
第22901号
セレクト乳剤
特徴
一年生、多年生を問わず広範なイネ科雑草に高い効果を示す茎葉処理型除草剤です。従来のイネ科雑草防除用茎葉処理剤では防除が困難なスズメノカタビラにも有効です。
イネ科植物と非イネ科植物との間にきわめて高い選択性がある(=非イネ科植物には効果を発揮しにくい)ので、マメ類やテンサイ、タマネギなどの広葉作物や非イネ科作物に対して安全に使用できます。
使い方
小豆、いんげん豆、大豆、枝豆などの豆類、キャベツ、ねぎ、大根、かぼちゃ、玉ねぎ、にんじん、にんにく、アスパラガスなどに使うことができます。
希釈水量は作物や雑草の種類により異なるので、製品のラベルをよく読んで使うようにしてください。雑草茎葉にかかるよう、まきむらのないように均一に散布しましょう。
登録番号
第22577号
バサグラン液剤
特徴
バサグラン液剤は、茎葉処理除草剤です。一年生広葉、カヤツリグサ科雑草および多年生雑草に安定した効果があります。
難防除雑草のクログワイ、オモダカ、シズイ、コウキヤガラ、エゾノサヤヌカグサ等や近年問題になっているスルホニルウレア抵抗性のホタルイ、アメリカアゼナ等にもよく効きます。
イチビ、オナモミ、タデ類、ハコベ等広範囲の農地地の広葉雑草に高い効果があります。薬剤処理適期幅が広く生育期処理での効果が高いので、雑草の発生をみてから処理でき、無駄なく使うことができます。人畜毒性及び魚毒性への影響が少ない除草剤です。
使い方
水稲から野菜まで、様々な作物に対して使うことができます。使用量、使用方法、使用時期、使ってよい回数は、作物や雑草により異なるので、よく調べた上で使用するようにしましょう。
登録番号
第21254号
ゴーゴーサン乳剤
特徴
雑草発生前に土壌に処理することで、イネ科・広葉雑草を同時に防除します。40〜60日間の長期間にわたり、雑草の発生を抑制します。作物に対しての薬害のおそれが少なく、土壌の種類、温度、日照などの条件によらず、安定した効果を発揮するのもポイントです。
使い方
ゴーゴーサンは土壌処理型の除草剤であり、雑草発生前に散布しなければいけません。雑草の芽が出たばかりの段階でも少しなら効果がありますが、効果を最大限に引き出すためには、雑草が発生する前に散布することが重要です。
ゴーゴーサンは、主に作物の播種や移植の前後(作物によって異なる場合もあります)に、雑草がまだ発生していない状態で使います。この除草剤は幅広い作物の栽培に使用できますが、各作物によって散布時期や適用土壌、使用方法が異なることに留意し、詳細な散布タイミングを必ず確認してから使うようにしましょう。
登録番号
第22176号
トレファノサイド粒剤
特徴
土壌処理型の粒剤タイプの除草剤です。食用作物・非食用分野どちらも様々な用途に利用できます。土壌処理により雑草の発芽時に幼芽、幼根から吸収され分裂組織の細胞分裂を阻害することにより、効果を発揮します。
各種の農地作雑草に有効で、特に、メヒシバ、ノビエ、スズメノテッポウ、イヌビエ、スベリヒユ、ハコベなど、イネ科雑草に対する除草効果に優れます。有効成分のガス化作用の助けによって、粒剤でも、土壌の表層に均一で隙間のない処理層を作ります。
使い方
土壌を細かく砕いて整地してから散布してください。土壌水分は、土壌を握ってばらつかない程度が最適です。有効成分が気散しないように、夕方や曇りの日などの日光が弱い時に散布する方がよいです。トレファノサイド粒剤は、雑草が発生する前に土壌に散布することで、雑草の成長を抑制する除草剤です。雑草が発生しているところに散布しても効果がありませんので注意してください。
登録番号
第9512号
まとめ
商品 | 使用方法 | 特徴 |
---|---|---|
雑草の葉や茎に |
除草の大変なスギナの根を |
|
雑草の葉や茎に |
品質・効果は高いのに |
|
雑草の葉や茎に |
イネ科、広葉、一年生、 |
|
雑草の葉や茎に |
効果発現の早さ、 |
|
雑草の葉や茎に |
一年生、多年生を問わず |
|
雑草の葉や茎に |
難防除雑草や |
|
雑草発生前に |
土壌の種類、温度、 |
|
雑草発生前に |
メヒシバ、ノビエ、 |
除草剤を正しく使用すれば安全に除草することができ、収穫量や品質の向上、労力の軽減になります。
しかし、使用方法をよく読まず使ってしまうと、効果が発揮されないだけでなく、人や動物、環境に悪影響を及ぼす可能性があり、法令違反になってしまいます。農薬を使用する際には、必ずラベルをよく読んで、正しく使用するようにしましょう。
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