農業法人を設立すべき?メリット・デメリットを解説
農業法人とは、農業を営む法人のことです。 農業法人を設立すればさまざまなメリットを期待できますが、デメリットもないわけではありません。
この記事では、農業法人の概要とともに、メリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
農業法人を設立するか検討中の人は、ぜひ役立ててください。
- 目次 -
農業法人を設立するメリットとは
農業法人を設立すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、農業法人を設立するメリットについて具体的に解説します。
信用力が向上する
農業法人になると決算が必要であり、社会的責任も大きくなります。
適切に決算を行えば信用力が上がるため、金融機関から融資を受けたいときも審査で有利になる可能性があります。
人材確保・育成がしやすくなる
農業法人になれば、人材の確保や育成もしやすくなります。福利厚生の整備により安心して働ける環境が整い、必要な人材を集めやすくなるからです。
人材確保に成功すれば、経営の効率化や事業規模の拡大も目指せます。
経営承継がしやすくなる
農業法人なら、構成員や従業員に対して経営承継ができます。
親族以外にも経営承継しやすく、より優れた人材を後継者として選べるようになります。
個人事業主として農業を営んでいる場合、農地の所有権は個人が有しているでしょう。
その場合、農地の所有権者が死亡すると、所有権の相続やそれに伴う手続きに手間がかかります。
しかし、農地の所有権を農業法人としておけば相続の必要がなく、経営承継の手続きもスムーズに進みます。
税負担の軽減につながる可能性がある
農業法人を設立すれば、税制面でも有利になる可能性が高いです。
たとえば、役員に支払う報酬は損金算入ができ、従業員の給与は給与所得控除の対象になります。
さらに、農地所有適格法人であれば、農業委員会の斡旋で農地を取得すると800万円の譲渡所得特別控除や、不動産取得税と登録免許税の軽減措置を受けられます。
家族が中心となって農業を営むとしても、農業法人なら個人事業主よりも税負担の軽減につながる制度を多く利用できるでしょう。
補助金を活用しやすくなる
農業法人になると、個人事業主よりも補助金を活用しやすくなります。補助金の限度額が上がり、事業規模を拡大するための施策にも取り組めるようになる可能性があります。
たとえば、補助金の有効活用によって最新の高度な農業機械も導入しやすくなるでしょう。
また、農業法人になれば、利用できる補助金制度の種類も多くなります。
そもそも農業法人とは
農業法人とは、法人格を取得して農業に取り組む組織の総称です。農業法人は、さらに農事組合法人と会社法人の2つに大別できます。
農事組合法人は、農業協同組合法に基づいて農業のみを営む組織です。
それに対して会社法人は、会社法に基づいて事業に取り組む組織です。
株式会社、有限会社、合名会社、合資会社があり、農業以外の事業にも取り組めます。
さらに、農地法で定められている要件を満たしている法人は、農地所有的確法人になれます。農地所有的確法人は農地の所有や売買も可能です。
農業法人と株式会社は異なる?
すでに説明したとおり、農業法人は農業を営む法人の総称です。農業法人の種類として、農事組合法人や会社法人の株式会社などがあります。
農事組合法人を設立するには、3人以上が共同で定款の作成や登記などをする必要があります。一方、株式会社は会社法で定められた法人形態であり、1名でも設立可能です。よって、個人で農業法人を設立する場合は株式会社が選択肢の1つになります。
農事組合法人と会社法人の違い一覧表
農事組合法人と会社法人の違いをまとめると、以下のとおりです。
農事組合法人 | 会社法人 | |
---|---|---|
法人の種類 | ・1号法人 ・2号法人 |
・株式会社 ・合同会社 ・合資会社 ・合名会社 |
根拠となる法律 | 農業協同組合法 | 会社法 |
それぞれ根拠となる法律が異なるため、経営に関するルールにも細かい違いがあります。
以下では、農事組合法人と会社法人の違いについて詳しく解説します。
農事組合法人とは
農事組合法人とは、農業協同組合法に則って設立された法人形態です。農事組合法人を構成する人員は社員ではなく、組合員とよばれます。
農事組合法人の目的は、組合員同士で協力して共同の利益増進を図ることです。組合員として農事組合法人の構成員になれるのは、原則として農業を営む人だけとなっています。
また、農事組合法人には1号法人と2号法人があります。
1号法人は共同で利用する施設や設備の設置を目的としているのに対し、2号法人の目的は農業経営そのものです。
会社法人とは
会社法人とは、会社法に則って設立された法人形態です。
すでに説明しているとおり、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社に分かれています。
公益社団法人日本農業法人協会がまとめた「2020年版 農業法人白書」によれば、農業法人のうちの約8割は株式会社です。
次に多いのは合同会社ですが、割合は全体の約1%となっています。合資会社と合名会社については、調査が行われていません。
農業を法人化するデメリットも確認
農業法人を設立する場合、デメリットも生じます。
ここでは、農業を法人化するとどのようなデメリットがあるのか解説します。
社会保険料の負担額が増える
農事組合法人で確定給与支払制を採用する場合や会社法人になる場合は、社会保険への切り替えが必要です。
従業員の健康保険や厚生年金保険の保険料の半分は、法人が負担しなければなりません。
さらに、従業員が1人以上いれば、労災保険や雇用保険への加入も義務になります。
要件を満たすことが難しい
農業法人として農地を所有するには、要件を満たして農地所有適格法人になる必要があります。
要件を満たせなければ、農地を所有したまま法人にはなれません。
農地所有適格法人になるには、営農計画が必要です。
また、農地の面積の合計が原則として50a以上あり、周辺の農地の利用に支障がないことが条件となります。
さらに、農地所有適格法人になるには、法人としての的確要件も満たしている必要があります。
具体的には、株式会社などの法人であり、主たる業務が農業でなければなりません。
また、総議決権の過半数が農業関係者で構成され、役員の過半数が農業に従事する構成員である必要があります。
コストがかかる
法人を設立して運営するには、さまざまなコストが必要です。
まず法人を設立するには、設立費用がかかります。設立費用の具体的な金額については後述します。
また、法人の設立後は、経理や決算などを適切に行うために税理士や会計士などへの依頼も必要です。それぞれ報酬の支払いが発生します。
さらに、法人になると法人住民税の支払いも義務になります。
農業を法人化する場合は、コストのやりくりについても事前によく検討しておかなければなりません。
設立後は簡単に解散できない
農業法人を一度設立したら、簡単には解散できません。法人の解散や廃止の手続きには多くの時間や手間がかかります。
自分たちでは対応できず、代行業者に依頼するケースも多いです。そのため、慎重に考えたうえで農業法人を設立しましょう。
農業法人を設立する手順を解説
農業法人を設立するには、さまざまな手順を踏む必要があります。
ここでは、農業法人を設立する手順を詳しく解説します。
会社の基本情報を決める
まずは設立する会社の基本情報を決めましょう。具体的には、会社名、本店の所在地、事業内容などを決定する必要があります。
また、農地所有的確法人を目指すなら、持株比率や役員の構成などにも配慮しましょう。
前述した要件を踏まえ、設立しようとしている法人が要件を満たせるか確認してください。
定款を作成・認証する
定款とは、法人の指針となる情報をまとめた書類です。事前に決めた会社名、本店の所在地、事業内容などに加え、さまざまな規則を定めて記載します。
定款の書き方について特別な決まりはありません。Wordを活用したり、オンラインで定款を作成できるサービスを利用したりしましょう。
定款の完成後はPDFファイルに変換し、電子定款として公証役場へ送信して認証を受けます。
出資を履行し、役員を選任する
出資の履行とは、定款で定めた資金の払込みのことです。基本的には、発起人が設立時発行株式を引き受けます。
その後、発起人が設立時役員会を開催し、設立時役人を選任する必要があります。
設立登記を行い、届け出る
農業法人を設立したら設立登記が必要です。法務局に出向いて登記申請を行いましょう。
また、あわせて諸官庁に対する届出も行います。
具体的には、税務署に対して、青色申告の承認申請書や法人設立届などを提出します。また、労働基準監督署に対しては、労働保険関係設立届や適用事業報告書などの提出が必要です。
さらに、ハローワークへ雇用保険適用事業所設置届や雇用保険被保険者資格取得届を提出しましょう。
農業法人の設立費用とは
農業法人を設立する際は、複数の費用がかかります。
たとえば、定款認証手数料は資本金の額などによって異なり、3~5万円程度がかかります。
また、登録免許税は最低15万円です。 登録免許税の計算式は「資本金の金額×7/1000」ですが、計算結果が15万円に満たない場合は登録免許税が一律15万円となります。
ほかにも、会社印鑑を作成する費用や印鑑証明書を取得する費用などが必要です。 合計するとまとまった金額になるため、不足しないように用意しておきましょう。
まとめ
農業法人を設立すれば、さまざまなメリットがあります。 ただし、デメリットといえる部分もあるため、よく検討したうえで設立の手続きを進めましょう。定款の作成や設立登記など複数の手続きが必要であるため、それぞれ早めに準備を整えて対応してください。
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